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ラスト(靴の木型) スコッチグレインの工場見学5 [靴・鞄・革]

今度は靴の木型を見せていただきました。

ヒロカワ製靴の工場の地下一階には、図書館のようなラックが整然と並べてあり、赤、黄色、グリーンのカラフルな靴のラスト(Last: 木型)が型番ごとに保管されています。
Last01.jpg
この木型は、これから後の工程は靴を形にしていく際の基礎となるものです。また、製品になった靴を履く人にとっては、外観上のデザインもさることながら、足の形に合っているかどうか、ホールド感はどうか、疲れないか、などの履き心地を左右する重要な物となります。

ひっくりかえすとこんな感じ。
last02.jpg
人間の足形ではなく、靴の縫製作業のためにいろいろな機能を受け止めるように造られています。
色で木型のサイズが一目瞭然で分るにしたのは先代の社長、現会長だそうです。
last03.jpg
この木型もタイプは様々で、これを自社で調整・管理しています。上の写真の赤い木型も左右同じではありません。よく見るとつま先の部分の形が違います。流行に合わせて、また、日本人の体型に合わせ、特徴的と言われる幅広・甲高の足に合わせた靴を製造できるのだと納得しました。

製造に載せる木型を決める時は現社長と会長の間で喧々諤々の議論が続くようで、最近流行っている先細の靴に関して、会長はどうしても木型の先端を削ろうとし、社長は元の先細の木型で製造しようとした、などのエピソードをお聞きしました。このあたりは、企業の戦略的な部分なんでしょう。木型自身が知的財産の固まりなんだろうと感じました。
last04.jpg
図書館のように並べ足れた木型ですが、いま正に生産ラインに乗っている木型はここには無い訳で、ここにある木型は現時点では生産されていないタイプの靴の木型になります。ここ以外にも木型を保管する場所が外部にあるとのことでした。靴の形も流行がありますからね。

前回までの工程で造られた革のアッパーは、木型の上に載せられ、つり込まれて靴の形に成って来ます。
last05.jpg
ここから先は、高価な機械・器具を使用した工程となります。

工場見学の記事はつづきます。
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コメント 13

ぽりぽり

ここまで見学させてくれるのは、よっぽど自信があるのですね。すべての工程が見られるのって素晴らしいです。モノつくりの現場はワクワク感がありますね。
by ぽりぽり (2009-08-09 17:58) 

たいちさん

色でサイズを分けるあたり、現場の職人の気持を表していますね。
by たいちさん (2009-08-09 19:24) 

hideyuki2007y

>ぽりぽり さん

なるほど。工場見学は応募して当たったのですけれど、なにもかも包み隠さず、という雰囲気でした。工業製品にはブラックボックスが多いのですが、この靴工場は見応えがありました。

>たいちさん さん

色分けを始めた会長さん(前社長)は、創業者で靴作りを一から始めた人です。自分で靴を製造した経験からこのようなアイディアが出せたのだろうと思います。

記事がだんだんマニアックになりつつあるのが自分でも分ってますが、おつきあいいただき、コメントもいただき、ありがとうございます。
by hideyuki2007y (2009-08-09 23:59) 

めぎ

靴工場の見学とは、非常に面白い事をなさってますね!
私は足のサイズが小さすぎて、ドイツでは子供用しか売られて無くていつも困ってます。
by めぎ (2009-08-10 06:27) 

mau-mauu

こういう見学したら、より大事に履こうって気になりますね^^
by mau-mauu (2009-08-10 06:51) 

ナツパパ

ほら、クツは履いているうち延びる、といいますよね。
で、少し窮屈でも大丈夫って。
でも、良い靴って延びないんですよねえ。
最初に窮屈だと、そのまま窮屈...そんな経験があります。

ヒロカワ製靴さんの靴もきっとそうじゃないかな、と思うんですよ。
微妙に違っている多くの木型が作り手の丹念さを感じさせてくれますね。
by ナツパパ (2009-08-10 09:27) 

YAP

これだけの種類の木型で、より多くの人の足にぴったり合うものを選んでいくのですね。
色でサイズを分けているところとか、いろいろと工夫されて改善されてるんでしょうね。
by YAP (2009-08-10 11:36) 

Jalana

考えてみると当然なんですが、靴のメーカーってたくさんの
原型を持ってるものなんですね。
デザイン毎、サイズ毎、ものすごい数なんでしょうね。
by Jalana (2009-08-10 14:11) 

hideyuki2007y

>めぎ さん

確かに、ヨーロッパでは大人用は大きいの中心でしたね。ドイツやその周辺だと、足の幅や甲がある人でも大丈夫なガッチリとした靴が販売されていて助かった覚えがあります。フランスやイタリアはデザイン重視で細長い靴だったような。

>mau-mauu さん

製造工程をまじまじと見せられると、一層愛着が増して来ます。それに、製靴会社の人たちとお話したのが大きいと思います。いまは雨が多くてなかなか革靴を履けないのがちょっと。

>ナツパパ さん

私がお聞きした範囲では、革靴は履いているうちに少しは履き皺が付いて来て、柔らかくなります。また、グッドイヤーウェルテッド工法で造られた靴は、足に接するインソール(中底)と地面に接するアウトソール(本底)の間に中物(コルクやスポンジ)が詰めてあります。この中物が体重がかかるにつれて沈んでくるため、靴をおろしてからしばらくすると、足回り方向のサイズは緩やかに感じられるようになるとのことです。ですから、緩めのサイズよりはキッチリしたサイズを選ぶべきとのことでした。
このあたりは、人によっても感じ方違うし、売る方としても最終的にはお客さんの判断を優先する(当たり前ですが)とのことでした。

>YAP さん

靴のサイズは一般的な足の大きさ(足長)だけでなく、母趾と小趾の付け根部分を巡る足周(足囲)をもとにEやEEEといった横幅方向のサイズを選びます。この横幅のサイズが明確に選べるのが特徴だと思います。幅広のEEEサイズやもっと広めのEEEEサイズを比較的多く用意しているメーカーだと思います。

>Jalana さん

そうですね。他のメーカーがどうなっているのかも知りたくなってしまいます。今回お聞きしたのは、国内の他のメーカーは自社だけでなくて、外部契約会社で委託生産しているところも多いとのこと。ここの工場の場合は、革で出来ている部品はほぼ全て自社で生産しているために、品質管理が行き届きやすいのではと思います。

皆様コメントいただきありがとうございます。
by hideyuki2007y (2009-08-10 21:49) 

モモパパ

ヒロカワさんはそんな意味で色分けされたんですね〜!スゴい!
ここは確かに4Eが沢山あって幅広甲高の私にぴったりでした^^
by モモパパ (2009-08-10 22:29) 

りゅう

ラストの色に何か意味があるのかなぁ?と気になっています。
ちょっとポーリング場的な風景でなんとも面白いです。

こうゆうのを見ると自分のラストが欲しくなっちゃいます。
by りゅう (2009-08-10 22:47) 

jun

とってもおもしろいです!
私も自分の木型が欲しいなぁ・・・・
by jun (2009-08-11 01:01) 

hideyuki2007y

>モモパパ さん

3Eや4Eを明示的にラインアップしている靴メーカーは余りないのではと思います。日本人の足を考えた革靴を造っているメーカーなんだろうと思います。

>りゅう さん

ハハハ!なにか懐かしい感じが私もしていましたが、ボーリングでしたね(笑)。激しくガッテンしてしまいました。

>jun さん

オーダーメイドの靴もいつかはトライしてみたいと思っています。男性用の革靴は結構あるようです。ここの会社にマイ木型を作ってもらったら凄いとは思うのですが、、、機会があれば尋ねてみたいです(笑)。

皆様、マニアックな記事に温かいコメントありがとうございます。
by hideyuki2007y (2009-08-11 19:20) 

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